退職代行サービスについてテレビをはじめとした各種メディアで取り上げられるようになり、その知名度が向上するとともに、使用する人も増えています。
使用者が増えるに伴い、退職代行に関する様々な意見が飛び交っています。
一定の理解を示す肯定的な意見も増えていますが、「無責任」「モラルに欠ける」「社会人としてのマナー違反」など厳しい否定的な意見も目立ち、そうした言葉に続けて「クズ」と吐き捨てる人もいます。
そうした声を気にしすぎて、ズルズル仕事を続けて体調を壊したり、精神疾患を患うことが最も避けなければならないことです。
ただ一方で、退職代行を使用して会社を辞めるとしても、最低限のマナーというものもやはりあります。
本記事では、退職代行を使用する人は本当に「クズ」なのか、「クズ」などと悪口を言われないためにどうしたら良いのかを解説していきます。
退職代行を使用する人はクズなの?
退職代行を使用する人は本当にクズなのか、他人の意見より、まずは自分自身でその点についてはっきりさせないと先に進めません。
以下の3つにフォーカスをあてて考えてみます。
- 退職する権利がある
- 退職する理由があるのは基本的に会社側
- 社員の代わりはいるがあなたの代わりはいない
退職する権利がある
労働者はいつでも退職できる権利を有しています。これは法律で定められていることです。
期間の定めのない雇用の解約の申入れ(民法627条第1項)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
つまり、労働者が会社に辞めますと言えば、原則として労働契約は終了するということです。
なお、雇用先によっては自社の就業規則に「退職は辞める3ヶ月前に申告すること」といった記述がある場合もありますが、基本的には就業規則より法律が優先されます。
ここまでは、労働者の権利としての話ですが、企業側も終身雇用を維持するのは難しいという見解を示しています。
昨今は転職時代が到来している、そんな風に感じることが強くなっているのではないでしょうか。
生涯ひとつの企業に所属することは既にマイノリティー化してきており、企業側も説得はするものの、そこまで強く引き止めることも少なくなっています。
退職する理由があるのは基本的に会社側
退職代行サービスを使用する理由は人それぞれですが、そのほとんどの方が「自分の口から辞めると伝えるべき」ということをわかっています。
しかしそれでも退職代行サービスを使用することを決断したということは、それだけの理由があったということです。
お金を払ってでも辞めたいと思っていたんだなと、そこまで追い込んでしまっていたことを悔いてくれる方もいます。
反対意見が目立つ一方で、上司に相談しやすい環境が作れていたのか、接し方に問題はなかったか、会社側にも責任があったのではないかと、振り返りを行い、逆に申し訳なかったと謝罪されるケースもあります。
退職代行を使われたと、怒り狂う前に、なぜ使われたのか考えてくれる、退職代行を使われる会社と使われない会社の差がこのあたりにあるような気がします。
社員の代わりはいるがあなたの代わりはいない
長時間労働や過重労働によって体調不良や精神的な病を患う労働者が後を絶ちません。
追い詰められて、自ら命を絶ってしまうという最悪の事例もあります。
自分がいなくなったら会社や周りに迷惑をかける、そうした責任感が強すぎて、自身をとことこん追い詰め、ふとしたときに何かの糸が切れたかのように、体調を崩してしまう。
こうしたケースがとても多くなっています。
自分の身は自分で守るしかありませんが、誰かに頼ることはできます。
そうなる前に、退職できることが、退職代行を使用する最大の意義だと考えます。
ひとりの労働者の代わりはいくらでもいますが、あなたの代わりはいないのです。
退職代行を使うか悩んでいる時点で、もう十分過ぎるほど悩んで苦しんでいるはずです。
決して「クズ」などではありません。
退職代行を使用するとクズと言われる理由
わたしたちは社会人としての在り方を就活の中や入社後の新入社員研修、それから実務の中で学んできました。
礼儀、言葉遣い、身だしなみ、コミュニケーション、ルールの厳守、どれも社会人としてやっていくためには欠かせない大事なことです。
退職代行を使って会社を辞めるというのは、ある意味それら学んだことを否定する行為であると捉える人もいます。
そしてそれが、退職代行が「クズ」と言われる主な理由となっています。
退職代行についてどのような見方をされるのか、それは以下の3つとなります。
- 急にいなくなるイメージがある
- 退職者のフォローを誰かがしなければならない
- お世話になった人にも無断で辞めてしまった
急にいなくなるイメージがある
急に辞めるということは、「仕事を途中で放り出す」ということになってしまうケースが多いです。
引き継ぎもできてないのにいなくなって本当に困るのは会社や上司とは限りません。
多くの場合、同じような境遇に立たされている周りの人たちになってしまいます。
ただ、「自身が抱えている仕事をすべて終わらせてから」と考えているといつまで経っても辞められません。
急にいなくなっても周りの人たちでフォローできるくらいの引き継ぎ資料を作成しておく、そこまでできるのであればそれがベターです。
退職代行の利用者は増えていますが、まだすべての人が理解を示してくれるわけではありません。
ただ、そうした資料を見たとき、相当追い詰められてたんだなと理解を示してくれる人があらわれて、助けてくれるかもしれません。
ただし、だからと言って、引き継ぎが終わるまでと、我慢し続けて体調を崩してしまっては元も子もありません。
退職代行を使わずに辞めた人が責任を果たして辞めているのかを考えると、疑問が残ります。
退職代行を考えている時点でかなり追い詰められているようなケースが本当に多いので、「もう無理だ」と感じたのなら、それ以上は考え過ぎずに退職代行を使ってください。
退職者のフォローを誰かがしなければならない
退職代行業者は、最短で退職できるよう取り計らってくれるわけですが、当然、その分のフォローを誰かがしなければなりません。
それは会社に迷惑をかけていると捉えられます。
だから退職代行を使って辞めることを「お世話になった会社に対してすることではない」と考えるわけです。
その考え方がまったくの間違いであるかと言えば、そういうわけでもないのでしょう。
このような意見については「仕方がない」と割り切るしかありません。
お世話になった人にも無断で辞めてしまった
会社に対して恩義をまったく感じないこともあるかもしれません。
ただ、それでも会社があったから仕事ができて、給料がもらえていたという側面もあります。
管理職の人たちや上司は都合の悪い部分は棚に上げて、退職日まで、感謝とともに誠実に仕事に取り組むのが常識だと考えています。
また、仕事のやり方を教えてくれた人などお世話になった人はいるはずです。
会社やそうした人たちにも無断で退職代行を使って辞めることを「社会人のすることではない」と受けとられてしまうわけです。
迷惑をかけずに退職してクズと呼ばれない方法
退職代行を使用するにしても、事前に準備をしておけるようであれば、準備しておいた方が良いということは言うまでもありません。
ここからは、退職代行を使用する人は「クズ」だなどとと言われないために事前にしておける対策について考えていきます。
迷惑をなるべくかけずに退職代行を使うには以下の3つがポイントです。
- 仲の良い同僚やお世話になった人には挨拶をする
- しっかりと後任のために引き継ぎの準備をしておく
- 退職代行を使用せずに自分で直接申し出る
仲の良い同僚やお世話になった人には挨拶をする
仲の良い同僚やお世話になった人がいるなら、事前にひとこと挨拶しておくのが望ましいです。
挨拶ひとつで印象はガラリと変わります。
何の言葉もなくいなくなってしまうのは、ものすごく寂しく感じる人もいますし、もしかしたら何か力になってくれるかもしれません。
ひとこと言っておけば良かったと、後から後悔することがとても多いです。
辞めてからでは手遅れになってしまうので、そうした後悔をしないようにしましょう。
しっかりと後任のために引き継ぎの準備をしておく
引き継ぎは、これまで携わってきた仕事内容や仕事の進め方を、後任に伝える大事な作業です。
基本的に、この引き継ぎさえしっかりしておけば、「クズ」なんて言われる筋合いはありません。
引き継ぎ資料は文書ファイルとして残し、共有フォルダに格納しておくなどして、退職後も後任者や周りの人たちがそれを見ながら無理なく仕事が進められるようにしておくことが理想です。
ただ実際は、退職代行を使う使わないに関わらず、そこまで丁寧な引き継ぎができているかというと疑問が残ります。
そもそもひとりの社員が退職した途端、業務が進められなくなるというのは、その体制を黙認していた会社側の責任が大きいです。
必要最低限の引き継ぎは必要ですが、準備に時間をかけ過ぎないようにして、自分自身のことを優先することも大事です。
退職代行を使用せずに自分で直接申し出る
ここまで退職代行を勧めるような記述となっていますが、退職代行を使用しなくて済むなら、上司に直接辞めたい意向を伝える方が当然良いです。
なぜ会社を辞めたいと思ったのか、しっかり面談して話し合い、それ以外の道はないのかを模索した上で退職する。
それが会社側にとっても自分自身にとっても最も有意義な辞め方です。
わざわざ言うまでもありませんが、できるのであれば、退職代行を使用せずに会社と直接話し合って円満に退職することがイチバンです。
上司や会社に退職を言い出せない時は退職代行
社会人であれば、会社を辞めるということぐらい自分で言うのが当たり前という風潮があります。
その理屈も間違いではありません。
しかし、自分自身で言い出せない事情もあるわけです。
退職代行を使うのは、辞表を上司が受け取ってくれない、ひどいパワハラを受けておりとても言い出せる状況ではないなど、自分ひとりではどうしようもなくなったときです。
そこまで重い事情ではなくても、言いづらいと感じる状況は多々あります。
退職代行により、自分自身で切り出さなくてもよく、すべて代行してくれるというのが大きなメリットです。
上司や会社に退職を言い出せない時は、もう迷わず退職代行を使ってください。
退職代行を使用するやつはクズ?のまとめ
「退職代行を使用するやつはクズだ」
そういう風に言われる理由も、会社を辞めたいと思い、深く悩んでいる人ほど、よくわかっていることです。
それがわかるから、足かせになって身動きが取れなくなってしまう、そんな人が本当に多いです。
ただ、そういう意見は気にし過ぎてはいけません。
引き継ぎについては、まったくやらないとなると、文句を言われるのは仕方ありません。
状況にもよるところですが、基本的には引き継ぎせずに退職することは可能です。
ただ、もし自身がいなくなることで業務に支障をきたすことが明確であるならば、それはメールでも良いので、何かしらの形で伝えておいた方が良いです。
それは、会社に具体的な損失を与えてしまうと訴訟問題にまで発展するようなトラブルにもなりえるからです。
引き継ぎ以外のことでありえないと言われることは、ある意味仕方がないことです。
退職代行を使おうが使うまいが、誰かが辞めた後、何かしらの文句を言っている人は一定数必ずいます。
そういうのは気にするだけ本当に損ですので、何か言われるのは仕方ないと割り切ってしまうことも大切です。
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