「退職代行」と呼ばれるサービスをご存知でしょうか。
今、退職代行サービスを利用する労働者、退職代行業者から連絡を受ける会社が増えています。世の中に少しずつ浸透しており、注目されているサービスです。
実際、普段の日常の中で耳にする機会も増えてきているように感じます。
退職代行サービスとは、退職の意向を、自分で会社に伝えるのではなく、第三者の業者に頼んで代わりに伝えてもらうというものです。
働き方が多様化する中、いろいろな考え方が新しく生まれています。
退職がうまくできないというケースは正規雇用者に多いように感じるかもしれませんが、雇用契約期間が決められている派遣社員でも退職代行サービスを利用したいというケースも増えています。
本記事では、派遣で退職代行サービスを使用できるのか、気をつけるべきポイントとは何か、それらの内容をわかりやすく解説していきます。
派遣社員でも退職代行は使用可能?
派遣社員でも退職代行サービスを使用することは可能です。
ただ、派遣の種類によって注意すべき点があります。「派遣社員」とひとくちに言っても、そこから大きく3つに分類されます。
- 登録型派遣
- 常用型派遣
- 紹介予定派遣
そのうち紹介予定派遣は、派遣期間が終わったあと、その会社に直接雇用することを前提とする派遣のことであり、退職代行サービスとはあまり結びきません。
退職代行が使用可能かどうかという点において、ポイントとなるのは、「登録型派遣」か「常用型派遣」かのふたつです。
両者の違いは派遣元との雇用契約が「有期雇用契約」か「無期雇用契約」かの違いです。
なぜその違いがポイントなのか、それは、以下の民法に関連します。
期間の定めのない雇用の解約の申入れ(民法627条第1項)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
つまり、雇用期間の定めのない無期雇用契約を結ぶ常用型派遣であれば、労働者が会社に辞めますと言えば、原則として労働契約は終了するというわけです。
ですので、常用型派遣の場合は、退職代行サービスを使用しても特に問題ありません。
一方、登録型派遣の場合は退職代行サービスを申し込んでも業者の方から断られてしまう可能性があります。
基本的に期間の定めがある雇用の場合は、契約期間途中で雇用契約を解消することができません。
もちろん、やむを得ない理由がある場合はその限りではありません。これもやはり、民法で規定されています。
やむを得ない事由による雇用の解除(民法628条)
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
このため、退職代行ができないわけではありませんが、各々の事情を十分に考慮する必要があり、常用型派遣のケースよりややこしくなることが多いため、断ってくる業者もいるということです。
正社員の退職代行について知りたい方は「正社員で退職代行を使用する際の不安を解消!後悔や失敗をなくす使い方!」の記事を参考にするのがおすすめです!
退職代行を派遣社員で使用した場合のメリット3選
退職代行は派遣社員でも可能ということをここまででお伝えしました。
登録型派遣においても、引き受けてくれる業者ももちろんでありますので、ひとりで悩み過ぎないようにしてください。
こうしたサービスを利用することは決して悪いことではありません。
では、派遣社員が退職代行サービスを使用した場合のメリットとは何でしょうか。
ここでは代表的な3つのメリットを紹介します。
- 引き止めにあうことなく退職できる
- 即日で派遣会社を退職することができる
- 派遣元に言いづらくても自分から退職を伝えなくてよい
引き止めにあうことなく退職できる
労働者人口が減っている昨今において、人手不足は深刻です。貴重な戦力ですので、引き止めにあうこともあるでしょう。
特に派遣社員の場合は、労働者の他、派遣元会社と派遣先会社の関係も密接に絡んできます。
雇用契約を結んでいる派遣元会社からしたら、派遣社員が辞めるといったら派遣先会社からの印象が悪くなってしまうケースもあります。
そのため、かなり強引に引き止めてくることも珍しくはありません。
それが叱責になったり、損害賠償をほのめかされたり、自身が不利になる誓約書を書かせようとしてきたり、なかなか円満退職というのは難しいものです。
そうしたことに備えることが退職代行サービスを利用するメリットと言えます。
即日で派遣会社を退職することができる
新たな就業先が決まっている場合は、なるべく早く退職したいところです。
前述の民法627条第1項にあるとおり、退職の意思を会社に伝えてから、原則として2週間は出勤義務があります。
ただし、派遣元との交渉次第で、即日退職も可能です。
退職代行を行う業者は、会社側に退職を認めてもらえるような説得の仕方、伝え方は上手いです。
場合によっては、2週間以上経っても退職させてもらえないケースも往々にしてあります。
自身で交渉するより、退職代行業者に依頼した方が時短になることが多いです。
派遣元に言いづらくても自分から退職を伝えなくてよい
退職の意思を伝えるというのは、なかなか言い出しにくいものです。
辞めたくても辞められない、そんな厳しい状況に置かれている中で、真面目な方ほど、いろいろなことを考えて、思い悩んでしまうところです。
ただ、自分自身のことも優先してあげないといけません。
派遣元に言いづらいのであれば、退職代行サービスを利用するというのも立派なひとつの手段です。
退職代行を派遣社員で使用した場合のデメリット3選
退職代行サービスを使用するメリットについてここまで考えてきましたが、メリットがあればデメリットもあります。
- 派遣元のブラックリストに載ってしまう可能性がある
- 最悪の場合、損害賠償の可能性がある
- 退職するだけなのに費用が発生する
派遣元のブラックリストに載ってしまう可能性がある
退職代行サービスを使って辞めたとしても、それが転職に不利なるということにはなりません。
退職代行サービスを使ったことを面接などで説明する必要もありませんし、書類上では「退職した」とい事実しか残らないためです。
ただ、派遣会社が大きな会社であり、グループ会社がたくさんあるような場合は、ブラックリストのようなものが作られ、そこに記載されてしまう可能性はあります。
最悪の場合、損害賠償の可能性がある
退職代行サービスを行う業者も増えてきています。
そうした中で注意すべき点は、知識やノウハウがない業者や対応がいい加減な業者を選んでしまったときのリスクです。
退職について実はしっかりまとまっていないのに、依頼者に対して、「話はついたので明日から出勤しなくて良い」と言われて、そのとおりにしたとします。
しかしそれがもし、しっかりまとまっていなかった場合、理由なく出勤しなかったことになってしまいます。
そしてそれは契約違反となり、最悪、派遣元会社から損害賠償請求されてしまうこともあり得る話です。
そうしたリスクを備える意味で、業者選びはとても重要です。
退職するだけなのに費用が発生する
退職する場合、収入面の不安がつのることも多いです。
そんな中で、退職代行サービスを依頼するにも当然依頼料はかかります。
費用についての相場はこの後、詳しく見ていきますが、安いところでも2万~3万円はかかります。
また、依頼内容が複雑になると、追加費用が発生することもあります。
この辺りはデメリットとしてしっかり捉えておかないといけません。
ただ、一方で、退職するために要する時間を大幅に減らせるというメリットもあります。
次のステップに進む障壁となっているのであれば、お得であるとも言えます。
退職代行を使わずにバックレると?
自分は正社員じゃなくて「ただの派遣社員」だからと言ってバックレることは絶対にやめましょう。
確かに正社員より待遇は悪い場合が多いです。ただ、派遣社員と言っても社会人であることには変わりありません。会社で働いて給与をもらっているわけです。
基本的なルールを守らなければ、相応な社会的責任を課せられることになります。
・損害賠償を請求される
・懲戒解雇となる
・転職活動に影響する
・家族や両親に連絡される
辞めたいけど会社に言いづらいからバックレてしまおうと考えたり、なかには連絡できないほど、追い詰められているケースもあります。
しかし、会社をバックレるというのは大きなリスクを背負う行為となります。無断欠勤が長引けば長引くほど、その後の人生にも影響を与えてしまうこともあります。
もしそこまで追い詰められているようであれば、迷わず退職代行を使ってください。
派遣社員で退職代行を使用する際の料金相場
退職代行の料金相場はどれくらいなのでしょうか。
そんなに多く利用するサービスではないため相場がわからないのが普通です。
正社員が退職代行を使用する場合の相場は、
3万~5万円となっています。
正社員や契約社員・派遣社員とアルバイト・パートでは正社員向けのサービスの方が相場は若干高くなっています。
では、派遣社員の場合はどのくらいの料金なのでしょう。
その疑問の答えですが、正社員と同じ金額を設定しているところがほとんどです。
ですので基本的に派遣社員だから安くなるということはないと考えた方が良いでしょう。
値段が上がっても安心できるサービスがおすすめ!
値段は多少高くなっても安心できる退職代行サービスを利用するのがおすすめです。
退職代行サービスの料金はピンからキリまであり、格安でやってくれる業者もあります。
会社を退職するということは、金銭的負担がこれから大きくなるということであり可能な限り安く済ませたいと考えるのが自然と言えるでしょう。
ただ、経験があまりなく、詰めが甘い業者やいい加減な業者にあたってしまうと、余計なトラブルが発生してしまいます。
そうしたトラブルを防ぐには少し割高にはなりますが、弁護士に退職代行を依頼するのもひとつの手段です。
基本的に、弁護士資格を持たない業者ができることは、退職したいという意思を会社に伝えるのみです。
会社側としても退職代行サービスを使われたと考えるため、良い気分はしないはずです。
会社が退職を受け入れなければ、どうすることもできません。
過去の失敗を持ち出してきて損害賠償請求をほのめかす会社もあるようです。
会社側がそうした強硬姿勢を見せたとき、知識の面においても資格の面においても、対応できるのは弁護士のみです。
また、相手が弁護士となると会社側も下手な強硬姿勢を見せることもないでしょう。
そうした面でも安心できます。
派遣で退職代行を利用する時によくある質問
派遣は最短何日で辞められる?
- 派遣は最短何日で辞められる?
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派遣社員の仕事辞め方は、派遣元企業や派遣先企業との契約内容によって異なります。一般的に、退職手続きを行うまでには数日から1週間程度の時間が必要となることが多いです。
正社員派遣の退職方法は?
- 正社員派遣の退職方法は?
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正社員派遣で仕事を辞める場合は、通常の正社員と同じように、派遣先企業との雇用契約を解除することで辞めることができます。また、派遣元企業との雇用契約も解除する必要があります。
使えない派遣社員の特徴は?
- 使えない派遣社員の特徴は?
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使えない派遣社員とは、派遣先企業で働く派遣社員で、仕事ができない、能力が低いなどの理由で、派遣先企業から使用されない人のことを指します。
使えない派遣社員の特徴は、仕事ができない、能力が低いなどが挙げられます。このような派遣社員は、仕事ができないため、派遣先企業から使用されないことが多く、働くことができません。
使えない派遣社員は、通常の派遣社員と同じように、派遣元企業との契約を解除することで、仕事を辞めることができます。また、退職手続きを行う場合も、派遣元企業との手続きを行います。
使えない派遣社員については、派遣元企業が適切な指導や支援を行うことが重要です。使えない派遣社員が仕事を辞める前に、派遣元企業が個別に指導や支援を行うことで、派遣社員が能力を向上させることができる可能性があります。
派遣社員でも退職代行は使える!安心できるサービスを使おう!
本記事で見てきたように派遣社員でも退職代行は使えます。
退職理由をあれこれ聞かれるのが苦痛だと感じたり、社会保険や雇用保険の切り替えに要する事務手続きなどを手間だと感じるのであれば、退職代行サービスに任せることも悪いことではありません。
もちろん、自分で退職したいという意思を会社に伝えることができるのであれば、それに越したことはありません。
ただ、それができない事情がそれぞれにあるから退職代行サービスというもののニーズがあるわけです。
派遣先、派遣元のどちらの会社とも関わりたくない、すぐに仕事を辞めたいと思うのであれば、その気持ちに従うのが良いです。それは甘えとかではありません。
最も大事なことは自分自身を大切にすることです。
ただだからと言って、バックレて会社へ行かないという選択は最悪手と言えます。
バックレることは自身にとって最も損する結果になってしまいます。
ひとりで思い悩んだりせず、安心して退職代行サービスを使ってください。
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